入れ歯が痛くてはめられない・外れてしまう原因とは?

歯を抜歯することになり、初めての入れ歯になった…

入れ歯(義歯)を作ったのに、「痛くてはめられない」「すぐ外れてしまう」「食事中に浮いてしまう」——
このようなお悩みを抱えている方はとても多くいらっしゃいます。

せっかく作った入れ歯も、合わなければ毎日の食事や会話が苦痛になってしまいます。
そしてだんだん入れることが億劫になってしまい、つけるのをやめてしまうことにつながります。
この記事では、なぜ入れ歯が痛くなったり外れたりするのか、その主な原因対処法について、歯科医の立場からわかりやすく解説します。


■ 入れ歯が痛くなる原因

① 入れ歯の「適合」が合っていない

入れ歯は、歯ぐき(粘膜)や顎の骨の形にぴったり合っていないと、
一部にだけ強い力がかかってしまいます。
その結果、入れ歯があたる部分が「擦(す)れて」痛みや傷を起こしてしまいます。

特に新しい入れ歯を作ったばかりの時期は、
ほんの0.数ミリのズレでも違和感や痛みが出ることがあります。
これは「調整」が必要なサインです。

特に抜歯をしてから歯茎の形は大きく変化しますので、隙間に物が挟まる、入れ歯を入れるだけでも痛い!そういう場合は調整すればある程度改善が見込めます。

💡対処法
無理に我慢して使い続けると、粘膜が炎症を起こしてさらに合わなくなります。
痛い部分を確認し、歯科医院で少しずつ削って調整を受けましょう。


② 噛み合わせ(咬合:こうごう)のズレ

入れ歯の「噛み合わせ」が合っていないと、特定の歯だけに強い力が加わります。
その力が歯ぐきに伝わり、痛みやズレの原因になります。

入れ歯は歯茎の上に乗せている特性上、噛む力を歯茎や残っている歯に負担を求めます。
残っている歯と比べると歯茎の粘膜の方が大きく沈み込む(被圧変異量が大きい)ので他の歯と同じだけ当たると歯茎にダメージを負う事があります。

また、上下の入れ歯のバランスが悪いと、噛んだ瞬間にガタつきやすく、
外れたり浮き上がったりすることもあります。

長い間違和感のある状態で噛んでいると、噛み合わせや顎の位置がずれてしまう事があります。

💡対処法
入れ歯を作ったあとも、数回の「咬合調整(こうごうちょうせい)」が必要になります。
数日使って違和感が出たら、遠慮せず歯科医院に相談しましょう。


③ 粘膜や骨の形の変化

入れ歯を作った当初はピッタリ合っていても、
時間の経過とともに歯ぐきや顎の骨がやせていきます。
特に、歯を失ってから長年経っている方ほど、
骨の吸収(じょじょに骨が減ること)が進みやすく、
入れ歯が合わなくなってしまうのです。

抜歯をしてから2ヶ月間で急激に骨の変化が起こり6ヶ月〜2年かけて変化がおさまると論文などで発表されておりますが、そのほかにも残存歯の位置や入れ歯の設計などにより、骨の吸収が継続的に起こる場合もあります。

💡対処法
「リベース(裏打ち)」という方法で、入れ歯の内面を補修することでフィット感を回復できます。
また、数年ごとに作り直しが必要な場合もあります。


④ 入れ歯安定剤の使いすぎ

入れ歯が外れやすくなってから、安定剤(入れ歯用の接着剤)を多く使っている方も少なくありません。
しかし、これは一時的な対処法にすぎません。

むしろ、安定剤が厚くなることで入れ歯の位置がズレ、
かえって痛みや違和感が強くなるケースもあります。

入れ歯の安定剤の使用はよほどの難症例の場合を除いて、継続的に使う物ではありません。
定期的に歯科医院でチェックしていただければ、安定剤の使用量もある程度減らせることもあります。

💡対処法
安定剤を使うのは「応急的なときだけ」。
根本的には、入れ歯の調整・作り直しを行うことが大切です。


⑤ 強く噛みしめる・片側だけで噛む癖

無意識に強く噛みしめたり、片側ばかりで食べたりすると、
入れ歯の一部に負担が集中して痛みを引き起こします。
また、入れ歯のバランスが崩れ、外れやすくなる原因にも。

特に総義歯の場合前歯でかぶりつくと外れやすいという事があります。もちろん噛み方を工夫するのも一つですが、ある程度調整などによって改善することもでき、噛みつきのいい義歯というものを作成することで対処する事ができます。

💡対処法
両側でバランスよく噛むことを意識しましょう。
慣れないうちは、柔らかいものから少しずつ食べる練習をすると良いです。


■ 入れ歯が外れてしまう原因

① 吸着力が弱くなっている

総入れ歯の場合、**吸着力(真空状態で吸い付く力)**が安定のポイントです。
しかし、歯ぐきの形が変わったり、唾液(だえき)の量が少なくなったりすると、
この吸着力が低下して外れやすくなります。

年齢や服用薬の影響により唾液の量が減ってしまいます。
頻回に水分補給をしたり、義歯安定剤を使用したりすることで対処可能です。

💡対処法
唾液が少ない方は、保湿ジェルや水分補給を心がけましょう。
また、入れ歯の内面をリラインすることで吸着力が戻る場合もあります。


② 入れ歯のバネ(クラスプ)のゆるみ

部分入れ歯の場合、残っている歯にバネをかけて固定します。
このバネがゆるむと、入れ歯が浮き上がったり、会話中にカタカタ動いたりします。

このバネを自分で曲げてしまうと入らなくなったり、折れてしまう場合があるので素直に歯医者さんに相談してください。
折れてしまうと最悪の場合、入れ歯を一から作り直す結果となります。

💡対処法
歯科医院で簡単に調整可能です。ペンチなどで自分で曲げると、
金属が折れたり歯を痛めたりすることがあるので絶対に避けましょう。


③ 入れ歯の変形や破損

長年使っていると、入れ歯自体がわずかに変形したり、
人工歯(入れ歯の歯の部分)がすり減って高さが合わなくなることも。
その結果、外れやすくなる・噛み合わせが狂うことがあります。

💡対処法
5年以上使用している入れ歯は、一度チェックを受けるのがおすすめです。
修理・再製作のタイミングを歯科医が見極めます。


■ 我慢しないで!「痛い入れ歯」は必ず改善できます

「入れ歯はこんなもの」と我慢して使い続ける方も多いですが、
実は痛みのない・外れない入れ歯に調整することは可能です。
小さな違和感のうちに調整しておくことで、
快適に長く使い続けることができます。

また、最近では

  • 金属のバネが見えにくい入れ歯「ノンンクラスプデンチャー」
  • 金属床(きんぞくしょう)義歯による薄くて安定したタイプ
  • インプラントを併用して固定する「インプラントオーバーデンチャー」
    など、快適性を高める方法も進化しています。

■ まとめ

入れ歯が痛い・外れる原因の多くは、「形の変化」や「噛み合わせのズレ」です。
時間とともにお口の中の環境は変化しますから、
定期的なチェックと調整を受けることが大切です。

✅ 我慢せずに、違和感を感じたら早めに歯科医院へ
✅ 入れ歯安定剤に頼りすぎない
✅ 数年ごとに適合チェックを受ける

快適に食事や会話を楽しむためには、「痛みを我慢しないこと」が第一歩です。
あなたにぴったり合った入れ歯を作り直すことで、
もう一度、自然に笑顔で過ごせる毎日を取り戻しましょう。