虫歯を放置した人の末路 〜「様子見」で後悔しないために〜
「これって虫歯かな?」
「冷たいものがちょっとしみるけど、まだ大丈夫そう」
「忙しいし、もう少し様子を見ようかな…」
歯科医院に来られる患者さんから、こうした言葉をよく耳にします。
実はこの**“様子見”という自己判断**が、治療を大きく・長く・大変なものにしてしまうことが少なくありません。
今回は、
虫歯を放置するとどうなってしまうのか
なぜ早めの受診が大切なのか
を、患者さんにもなるべくわかりやすい言葉でお話しします。
虫歯は自然に治ることはありません
まず知っておいていただきたいのは、
虫歯は自然に治る病気ではないということです。
虫歯は、お口の中の細菌が出す酸によって歯が少しずつ溶かされていく病気です。
痛みがない時期もありますが、何もしなければ確実に進行していきます。
虫歯になっていても慢性的な状態で進行がほとんどない、もしくは非常にゆっくりという場合もありますが、歯科医師の判断なしに様子見というのは非常に悪手であります。
「痛くない=大丈夫」
ではない、というのが虫歯の怖いところです。
虫歯はどのように進行していくの?
虫歯の進行は、いくつかの段階に分かれています。
初期の虫歯(C1)
歯の表面(エナメル質)が少し溶け始めた状態です。
この段階では痛みはほとんどありません。
👉 この時期に見つかれば、
・削る量が最小限
・治療回数も少ない
・短時間で終わる
ことがほとんどです。
この初期虫歯の状態であれば、あえて様子見をすることもあります。
それはこの初期虫歯の虫歯治療をおこなった場合に、健全な歯の部分をたくさん削る可能性がある場合や、清掃性が担保されていて、明らかな進行が見られない場合です。
ですがこの判断は患者さん本人でできる問題ではありません。
必ず歯科医師の診断のもと様子見をして下さい。
少し進んだ虫歯(C2)
虫歯が歯の内側(象牙質)まで進んだ状態です。
冷たいものや甘いものがしみることがあります。
「ちょっとしみるけど我慢できる」
この段階で様子見をしてしまう方がとても多いです。
この段階であれば、虫歯の部分を削って詰めるという虫歯治療が必ず必要です。
ですが、この状態であれば比較的治療は軽度で終わります。
小さい虫歯であれば樹脂などを削った部分に詰めて終了するので1〜2回で治療は終わりますし、虫歯のできている場所が少し詰めにくい場所などであれば、型を取り詰め物などで治すこともあります。
この場合でも2~3回の処置で終了しますので、比較的短期間で治療の成功率も高くなります。
神経まで進んだ虫歯(C3)
虫歯が**歯髄(しずい)**に到達した状態です。
※歯髄=歯の中にある神経や血管の集まり
ここまで進むと、
・何もしなくてもズキズキ痛む
・夜眠れない
・噛むと強く痛む
といった症状が出ることがあります。
👉 この段階になると、
**根管治療(こんかんちりょう)**が必要になります。
※根管治療=歯の根の中の神経を取り、内部をきれいに消毒する治療
この根管治療になると急に治療が複雑化します。
根管治療は時間も回数もかかります
根管治療は、歯を残すためのとても大切な治療です。
ただし、
・治療回数が多くなりやすい
・治療期間が長くなる
・精密な処置が必要
という特徴があります。
また、神経を取った歯は、どうしても寿命が短くなりやすいという現実もあります。
「治ったと思っていた歯が、数年後にまた腫れてきた」
というケースも珍しくありません。
つまり神経などの処置がなるべく必要にならないように、早期に虫歯を発見し、早期に治療を行うことが非常に大切です。
よく治療の説明をする際に患者さんから
「神経取るんですか?」「痛いですよね?」「なんとか取らずに治して下さい」と
ご相談を受けることがありますが、
神経に感染が起きていた場合、その感染物質を取り切らない限り完治することはありません。
ですので感染が認められる神経は残していても痛みや腫れの原因になるだけです。
また、治療中は麻酔が効いているので、基本的にあまり痛みは感じないと思いますが、麻酔が取れた後は侵襲が加わっておりますので、痛みを感じることがあります。
この場合市販の痛み止めなどを服用しても構いませんので、もし手元にない場合は先に処方してもらっても良いと思います。
なんとか神経を取らずに治療する方法がないか?と問われると
ないこともないです。
それは歯髄温存療法や直接覆髄法、部分断髄法などがあります。
保険外治療として行う場合が多いですので、気になる際はお気軽にお伝えください。
治らなければ、抜歯になることも
根管治療をしても、
・歯の根の先に膿(うみ)がたまってしまった
・炎症がなかなか引かない
といった場合、完全に治癒させるのが難しいこともあります。
※歯の根の先に膿がたまった状態を「根尖病変(こんせんびょうへん)」と呼びます。
こうなると、
残念ながら抜歯を選択せざるを得ないこともあります。
「最初は小さな虫歯だったのに…」
と後悔される患者さんを、私たちは何度も見てきました。
「もうちょっと様子見よう」はおすすめしません
虫歯は、
早く見つければ見つけるほど、楽に終わります。
・治療がシンプル
・通院回数が少ない
・歯を長くたくさん残せる
逆に、放置すればするほど
・治療が複雑になる
・通院回数が増える
・歯の寿命が縮む
という結果につながってしまいます。
様子見る前に歯科医師に判断してもらいましょう。
歯科医院は「痛くなってから行く場所」ではありません
「歯医者は痛くなってから行くところ」
「詰め物が取れたらいくところ」
「痛くないのに行ってもいいのかな」
そう思っている方も多いかもしれません。
でも本当は、
何も起きていないように見える時こそ、受診のベストタイミングです。
・これ虫歯かな?
・しみる気がするけど気のせい?
・今すぐ治療が必要か知りたい
そんな軽い気持ちで大丈夫です。
個人的に思っていることですが、
『患者さんのお口の中の環境を何事もない状態を永続的にしていくこと』
これこそが歯科医師として最高の治療だと思っています。
治療が必要な歯が一本もない
治療したことがない
そんな患者さんが一人でも多くなればいいなと思っています。
最後に:あなたの歯を守れるのは「今」です
虫歯を放置した人の末路は、
決して特別な人の話ではありません。
誰でも、
「忙しい」
「怖い」
「まだ大丈夫そう」
と思ってしまいます。
でも、ほんの少し早く行動するだけで、未来は大きく変わります。
このブログが、
「ちょっと診てもらおうかな」
と思うきっかけになれば、私たちはとても嬉しいです。
あなたの大切な歯を、
一緒に守っていきましょう。


