🦷 虫歯や歯周病じゃないのに歯が痛い…それ、“歯根膜炎”かもしれません
「検診で虫歯なしと言われたのに、なぜか歯が痛い」
「噛むと響くような痛みがある」
「何度か奥歯が痛くなることがあるが、自然に治っていったので様子見ている」
このようなご相談は、実はとても多いです。
そして、その原因のひとつに 歯根膜炎(しこんまくえん) があります。
本記事では、歯根膜炎とは何か、どうして起こるのか、放置して大丈夫なのか、わかりやすく解説します。
■ 歯根膜炎(しこんまくえん)とは?
歯根膜とは、歯の根っこ(歯根:しこん)と骨の間にある“クッションの膜” のことです。
この膜は、噛む力を吸収したり、歯に伝わる刺激を感じ取る大事な組織です。
実は、歯自体は噛む力を感じたり、今どれくらいの圧が歯に加わっているか感じることができません。
歯根膜炎は、この膜に炎症が起きた状態 を指します。
➡ 虫歯や歯周病がなくても痛みが出るのが特徴です。
■ どんな症状が出るの?
歯根膜炎の典型症状は以下の通りです。
✔ 噛むと痛い(噛んだ瞬間の鋭い痛み)
✔ 歯をコンコンと指で押すと響くように痛む
✔ 歯全体が浮いたような感覚
✔ 時期によって痛い時とそうでない時がある
(※虫歯と大きく異なるポイント)
特に、痛みの出方が“歯を押した時”や“噛んだ時”に限定されている場合は歯根膜炎が疑われます。
■ 歯根膜炎はなぜ起きるの?
主な原因は5つあります。
① 強い力で噛み続けている(食いしばり・歯ぎしり)
睡眠中の食いしばりは、体重の2〜3倍の力が歯にかかります。
一説によると奥歯には体重の2〜3倍以上の力がかかることもあると言われています。
体重60kgの方は120kg~180kgの負荷が奥歯にかかります。
これが毎日続くと歯根膜に負担がかかり炎症が起きます。
② 硬いものを噛んだ衝撃
・おせんべい
・氷
・スルメ
・固いお肉
こうした食品は歯に瞬間的な強い力が加わり、歯根膜を痛める原因になります。
③ 噛み合わせのバランスの崩れ
一部の歯だけが強く当たると、その歯に負担が集中。
結果として、歯根膜炎が起こることがあります。
よくある噛み合わせの崩れ方として、歯を抜いてから時間が経っており、その間に噛み合わない反対側の歯が伸びてきたり、奥の歯が手前に倒れてきたりします。
その結果、通常の噛み合わせの当たり方とは異なる形で、噛み合わさったり、その歯に強い噛み合わせの力が加わってしまい、急激に歯周組織を痛めてしまう。
④ 被せ物・詰め物の高さが合っていない
治療後、少しでも噛み合わせが高いと、その歯に過度な力がかかり炎症が起きやすくなります。
特に新たな被せ物や詰め物などを入れた際には、その場は良くても噛み合わせのずれが生じている場合がありますので、遠慮なく歯科医師に相談しましょう。
⑤ 急性炎症(根の病気や細菌による一時的な炎症)
見た目に異常がなくても、歯ぐきの内側で細菌が増えて炎症を起こしているケースもあります。
例えば噛み合わせの力やブラッシング圧、歯軋りなどでの歯のすり減りなどにより、歯の神経が露出していつの間にか感染を起こし、歯の神経が死んでいる場合があります。
■ 虫歯とどう違うの?
| 症状 | 虫歯 | 歯根膜炎 |
|---|---|---|
| 冷たい物がしみる | 多い | ほぼない |
| 甘い物がしみる | 多い | ない |
| 噛んだ時の痛み | ある場合も | ほとんどの人が感じる |
| 痛みの原因 | 歯の中の神経が炎症 | 歯の根の周りの膜が炎症 |
「噛むと痛いけど、しみる痛みはない」という人は歯根膜炎の可能性が高いです。
■ 放置してよい?→答えはNOです
歯根膜炎は自然に治ることもありますが、放置はおすすめしません。
理由は3つ。
✔ 炎症が長引くと、周囲の骨までダメージが広がる
長期間放置すると、骨の吸収が起きて“歯周病のような状態”になることがあります。
特に噛み合わせの力が過度にかかる状況の場合、急激にしかも限局的にその歯の周りの歯周組織そしてその歯の周囲の歯を支える骨(歯槽骨)を吸収し、突然歯がぐらつき出したり、歯茎から膿が出てきたりします。
噛み合わせの力により歯周病は、歯の根っこの先まで急激に進行することが多いですので、気がついたら抜歯をしないと症状が治らないという結果になることもあります。
✔ 慢性化して痛みを繰り返しやすくなる
強い力が原因の場合、何度も再発するケースが多いです。
噛み締めや歯軋りが強い方は、歯だけでなく、顎の筋肉にも炎症が起きてしまったり、痛い部位を庇って食事などをしていると、顎関節が痛んだり、変形してしまうこともあります。
その結果はだけでなく、顎全体が痛みが出てしまったり、顎関節症になり、口が思うように開かないという事態になる可能性もあります。
✔ 噛めない時間が増えると、口腔機能の低下につながる
特に高齢者では、噛めない期間が続くと食欲低下・栄養不足につながります。
■ 歯科医院ではどう治療する?
状況に応じて、以下の処置を行います。
① 噛み合わせの調整
詰め物や被せ物の高さを少し削るだけで痛みが大きく改善することがあります。
② 食いしばり対策(マウスピース)
就寝中に使うナイトガードで歯根膜への負担を軽減します。
またマウスピースがつけられないという方にはボトックス治療を提案することもあります。
ボトックス治療に関してはこちらの記事をご参照ください
③ 使いすぎた歯を“休ませる”指導
・片側だけで噛まない
・硬いものを控える
・一時的に反対側で咀嚼する
・できるだけ日常で上下の歯が接触しないように意識つける
など日常の注意点をお伝えします。
④ 根っこの状態が悪い場合は根管治療
歯の内部の感染が原因の場合は、根管治療(こんかんちりょう:歯の神経の治療)が必要になります。
■ 自分でできるセルフケアは?
歯根膜炎が疑われる場合、以下を数日試すと改善することがあります。
| ✔ 硬い食べ物を避ける
| ✔ 痛む側で噛まない
| ✔ 就寝中の食いしばりを減らすため、寝る前のストレッチ・深呼吸
| ✔ 歯ブラシを強く当てない
ただし、痛みが3〜4日改善しなければ受診をおすすめします。
■ まとめ:虫歯じゃなくても歯は痛くなる
歯根膜炎は、虫歯と違って外から見ても異常がわかりにくいため、
「何もないのに痛む」と不安に感じる方が多い病気です。
初期段階では様子見で大丈夫という診断になることもありますが、
虫歯や歯周病ではないという診断をしっかり受けた状態で歯根膜炎の診断を受けて欲しいなと思います。
間違っても自己判断で歯根膜炎と思って様子見ていると、実は虫歯や歯周病が隠れていた!ということにも繋がりかねません。そうすると余分に虫歯の部分をたくさん削ることになったり、歯を残しておくことができなくなる可能性がありますので、必ず歯科医院を受診するようにしてください
しかし、適切に診断し、負担を取り除くことで改善できます。
「噛むと痛い」「歯が浮く感じがする」などの症状があれば、早めに歯科医院でご相談ください。


